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■国際法とは何か

 現在地球上では70億の人間がおよそ200の主権国家に分かれて生活しています。これらの国家を基本的な構成要素とする社会が国際社会です。国際法はこの国際社会で、国家の行動を規律したり、国家間の紛争を解決したりするためのルールです。国際法は諸国が共存し、相互に交流し、問題解決に向けて協力するためには不可欠の存在だといえます。日本も国際社会の一員であり、私たちは主権国家たる日本の存在を通して、例えば海外旅行やデパートの買い物の際に知らず知らずのうちに国際法の恩恵を享受しています。国際法についての知識は、人やモノや金が国境を越えて動き回る現代においてますます重要になっています。
 

■国際法の特徴
 ところで、私たちが住んでいる国内社会とは異なり、国際社会では国家自らが他国と「合意」することによってお互いを拘束するルールを生み出します。国際社会には日本の国会のような立法機関がないからです。さらに国際社会では紛争当事国双方の合意がなければ裁判所は管轄権を行使することができません。国際法違反や判決の不履行についても、その執行のメカニズムは依然として発展途上にあります。このように、国際法は国内法と比較した場合、法の形成、適用、執行についていろいろと異なる側面が存在します。それが国際法の難しさでもあり、また面白さでもあります。

■現代国際法から21世紀の国際法へ
 現代の国際法は、国家に加えて国際機関、個人、NGO、多国籍企業などが新たな主体として国際法の形成や規範の実施に大きな影響を及ぼすようになり、また逆に国際法の規律を受けるようになっています。それは、従来、複数国の国益の算術的な総和にすぎなかった利益概念が変質し、徐々に「国際社会の共通利益」あるいは「国際公益」と称されるような、一定の普遍性を帯びた利益・価値が登場してきたことの裏返しであるともいえます。地球温暖化問題や大規模な人権侵害はそのような共通利益の代表例です。
 このような特徴をもつ「現代国際法」も絶えず変革の波に洗われています。例えば、9.11テロ以降の国際社会は、国境を越えて活動するテロリストをどのように取り締まるのか、テロリストが潜伏を許す国家に対していかなる行動をとることができるのか、大量破壊兵器がテロリストの手に渡らないようにするためにはどうしたらいいか、テロリズムの発生原因は何であり、それをいかにして除去するべきなのか、といった困難な問題に対処することが求められています。この問題に対して国際法が学問的にどのようにアプローチするのかについてはさまざまな理論的立場が考えられますが、とにかく現代国際法が大きな転換期にさしかかっているということは確かなようです。


■国際法入門ではどんなことを学ぶのか
 
 国際法入門は、国際法A(総論)、国際法B(各論)、国際法C(紛争解決)、国際組織法、国際人権法、国際環境法、アドバンスト国際法といった国際法関連科目を受講するための導入教育として、国際法の基本的な構造と、規則や制度の内容を理解してもらうことを目的としています。大まかに言えば、次のような順に講義を進めていくことになるでしょう。

※講義計画の詳細については、「法学部講義要項(平成26年度)」または近畿大学のサイトで公開されているシラバスを参照してください。

■国際法の学び方

 講義で初めて国際法に接した学生は、「何だか法律っぽくないな」とか、「扱う範囲が広すぎていやだな」とか、「分かりにくい概念が多いな」というような感想をもつかもしれません。たしかに国際法は他の法分野とは異なる特徴が多くありますし、その規律対象も多岐にわたります。ですが、国際法の基本的な構造を理解しておけば、あとはそこに講義で得た知識や考え方をあてはめていくことで全体像が理解できるはずです。教科書やレジュメを駆使し、得た知識を点と点で結び付けることを意識してください。講義の際は折を見て時事問題にも触れますので、日頃から新聞やテレビなどで問題関心を高めておけば講義の理解も進むと思います。
 国内法と同様、国際法の世界にも国際裁判で下される「国際判例」が存在します。講義では、それらの判例を多く扱います。事実の概要、争点(論点)、裁判所の判断を把握することを心がけてください。

■最後に
 
 
年間1,600万人が海外旅行に行き、食料や原材料の大部分を輸入に頼り、安全保障条約によって米国の軍事的なプレゼンスを受けている日本は、国際法の恩恵を多く享受しています。しかし、その陰では世界で毎年数百万以上の人々が難民として母国を後にし、先進国が世界の資源の約80%を消費しているかたわら10億人以上が1日1ドル以下で生活を余儀なくされ、そのうちの多くの人々が紛争や内戦の脅威にさらされていることも事実です。こうした現状に取り組むことも国際法の大切な使命の一つといえるでしょう。もっとも、国際法にも「できること」と「できないこと」、「するべきこと」と「するべきでないこと」が存在します。こうした限界を見据えつつ、国際法の学びを通して培った思考を他の学問分野とも融合させながら内外のさまざまなな場で生かしていくことが、先進国と称される国に生まれ、大学まで進学して国際法を学んだ者の最低限の責務だと考えています。私の講義がそのための小さな入り口となれば幸いです。


Last updated on May 8, 2014.