〔木曜5限、金曜3限〕
 
   
 参考文献


■国際法とは何か

 世界には約190の主権国家が存在しています。これらの国家を基本的な構成要素とする社会が国際社会です。国際法はこの国際社会で、国家の行動を規律したり、国家間の紛争を解決したりするためのルールです。しかし、私たちが住んでいる国内社会とは異なり、国際社会では国家自らが他国と「合意」することによってお互いを拘束するルールを生み出します。国際社会には日本の国会のような立法機関がないからです。さらに国際社会においては原則として国家の合意がないと裁判所は管轄権を行使することができません。国際法違反や判決の不履行についても、その執行のメカニズムは依然として発展途上にあります。このように、国際法は国内法と比較した場合、法の形成、適用、執行についていろいろ異なる面が存在します。それが国際法の難しさでもあり、また面白さでもあります。
 現代の国際法は、国家に加えて国際機関、個人、NGO、多国籍企業などが新たな主体として国際法の形成や規範の実施に大きな影響を及ぼすようになり、また逆に国際法の規律を受けるようになっています。それは、従来、複数国の国益の算術的な総和にすぎなかった利益概念が変質し、徐々に「国際社会の共通利益」あるいは「国際公益」と称されるような、一定の普遍性を帯びた利益・価値が登場してきたことの裏返しであるともいえます。
 このような特徴をもつ「現代国際法」も絶えず変革の波に洗われています。例えば、9.11テロ以降の国際社会は、国境を越えて活動するテロリストをどのように取り締まるのか、テロリストが潜伏を許す国家に対していかなる行動をとることができるのか、大量破壊兵器がテロリストの手に渡らないようにするためにはどうしたらいいか、テロリズムの発生原因は何であり、それをいかにして除去するべきなのか、といった困難な問題に対処することが求められています。この問題に対して国際法が学問的にどのようにアプローチするのかについてはさまざまな理論的立場が考えられますが、とにかく現代国際法が大事な学問的転換期にさしかかっているということは確かなようです。


■国際法の講義ではどんなことを学ぶのか
 
 国際法T(総論・基本理論)は、国際社会のルールである国際法の全体像と基本的な考え方を1年間の講義を通して捉えてもらうことを目的としています。大まかに言えば、次のような順に講義を進めていくことになるでしょう。


■国際法の学び方

 講義で初めて国際法に接した学生は、「何だか法律っぽくないな」とか、「扱う範囲が広すぎていやだな」とか、「分かりにくい概念が多いな」というような感想をもつかもしれません。たしかに国際法は他の法分野とは異なる特徴が多くありますし、その規律対象も多岐にわたります。ですが、前期の早い段階で説明する国際法の基本的な構造を理解しておけば、あとはそこに講義で得た知識や考え方をあてはめていくことで全体像が理解できるはずです。教科書やレジュメを駆使し、得た知識を点と点で結び付けることを意識してください。講義の際は折を見て時事問題にも触れますので、日頃から新聞やテレビなどで問題関心を高めておけば講義の理解も進むと思います。
 国内法と同様、国際法の世界にも国際裁判で下される「国際判例」が存在します。講義では、それらの判例を多く扱います。事実の概要、争点(論点)、裁判所の判断を把握することを心がけてください。
 私が担当する国際法の試験では、講義で得た知識の確認と、それらの知識を具体的な事例問題に適用して評価を加える能力をためします。ですから、国際法のさまざまな分野を頭の中で結びつけることを意識しながら講義を聴き、復習するとよいでしょう。分からない点はそのままにせず、質問に来たり、あとで確認したりしておくことが大切です。


■最後に
 
 
年間1,600万人が海外旅行に行き、食料や原材料の大部分を輸入に頼り、安全保障条約によって米国の軍事的なプレゼンスを受けている日本は、国際法の恩恵を多く享受しています。しかし、その陰では世界で毎年数百万以上の人々が難民として母国を後にし、先進国が世界の資源の約80%を消費しているかたわら10億人以上が1日1ドル以下で生活を余儀なくされ、そのうちの多くの人々が紛争や内戦の脅威にさらされていることも事実です。こうした現状に取り組むことも国際法の大切な使命の一つといえるでしょう。もっとも、国際法にも「できること」と「できないこと」、「するべきこと」と「するべきでないこと」が存在します。こうした限界を見据えつつ、国際法の学びを通して培った思考を他の学問分野とも融合させながら内外のさまざまなな場で生かしていくことが、先進国と称される国に生まれ、大学まで進学して国際法を学んだ者の最低限の責務だと考えています。私の講義がそのための小さな入り口となれば幸いです。


Last updated on Apr. 9, 2008