News & Events

2017年5月8日 インドがパキスタンをICJに提訴しました。
 パキスタンにおいて拘禁され死刑判決を受けたインド国民について、インド政府はパキスタンによる1963年の領事関係条約違反を理由としてICJに提訴しました。インドは同時にパキスタンに対して死刑の執行の停止などを内容とした仮保全措置命令を下すことも求めています(その後、ICJは5月18日にパキスタンに対し、最終判決が下るまで当該インド国民の死刑を執行しないことを命ずる仮保全措置命令を出しました)。事態の緊急性および被拘禁者保護の必要性に鑑み、インドは口頭弁論無しでの仮保全措置の命令を求めていますが、これはラグラン事件での職権での仮保全措置命令(1999年)やアヴェナ等メキシコ国民事件での仮保全措置(2003年)を想起させます。なお、インドはこれらの事件でICJの管轄権の根拠となった領事関係条約選択議定書を管轄権の根拠としています。



2017年1月16日 ウクライナがロシアをICJに提訴しました。
 ウクライナは16日、ロシアによる東部ウクライナおよびクリミアにおける様々な活動について、それらが「テロ資金供与防止条約」と「人種差別撤廃条約」に違反するなどとしてICJに訴訟を提起しました。ウクライナは同時にロシアによる一連の行為を停止させることを求める仮保全措置も請求しています(その後ICJは、2017年4月19日に人種差別撤廃条約違反に関する部分について仮保全措置を命令しました)。



2017年1月16日 コスタリカがニカラグアをICJに提訴しました。
 
コスタリカは同国とニカラグアとの国境地帯について具体的な境界画定をおこなうこと、およびニカラグアによる軍事施設の構築がコスタリカの領域主権の侵害であることを判決で宣言したうえで2015年のICJ判決に従って施設を撤去させることを求めています。なお、コスタリカは今回の訴訟を現在ICJに係属中の「カリブ海および太平洋における境界画定」(コスタリカ対ニカラグア、2014年提訴)に併合することを求めています。

2016年10月5日 ICJがマーシャル諸島の訴えを却下しました。
 核保有諸国が核軍縮義務を果たしていないとしてマーシャル諸島が9か国をICJに提訴した事件で、ICJは5日、選択条項の受諾宣言をおこなっている3か国(イギリス、インド、パキスタン)について判断し、これらの諸国との間に具体的な紛争が生じていないことを理由に同国の訴えを却下しました。裁判はこれで終了しますが、今後は非核兵器諸国を中心とした「核兵器禁止条約」採択への動きと、それを阻止しようとする核兵器国を中心とした勢力の対立が活発化しそうです。「核の非人道性への訴え」と「核抑止力の保持」に挟まれた日本政府の立ち位置も微妙なものになりそうです。



2016年7月12日 南シナ海の紛争について常設仲裁裁判所が判断を下しました。
 南シナ海における中国の一連の主張と行為についてフィリピンが提訴していた事件で、オランダのハーグにある常設仲裁裁判所(PCA)は12日、フィリピン側の主張を大筋で認める判断を下しました。特に、中国による「9段線」という独自の主張が歴史的にも国際法的にも認められないと判断されたことが重要です。その他、国際法上の「島」と「岩」の定義や判断基準を確認したうえで、南沙海域に「島」が存在しないこと、したがってそこから排他的経済水域(EEZ)や大陸棚を設定することは認められないこと、中国による埋め立て行為が珊瑚礁の破壊を招くなどの海洋環境の破壊として国際法違反であること、さらにそうした埋立行為やフィリピン漁船に対する妨害行為などがフィリピンの権利を侵害していることなどが確認されました。判決には法的拘束力が認められるものの強制執行の制度は存在せず、中国側も判決を無視することを公言していることから、今後は関係国間における主張の応酬や政治的駆け引き、さらには実力行使がどのように展開されていくかが焦点となるでしょう。なお、今回示された島と岩の定義と判断基準は、日本が領有している沖ノ鳥島が「島か岩か」という問題にも関わってくる可能性があるため、政府としても一応自国の主張の法的根拠を整理しておく必要がありそうです。


2016年6月14日 イランが米国をICJに提訴しました。
 米国における様々な法制定や判決、それらに基づく措置等がイランと米国間の友好通商関係及び領事関係条約(1955年)に違反するとして、14日、イランが米国をICJに提訴しました。米国の裁判所は今年の4月にイランの関与が疑われたテロ事件の被害者遺族に対して、米国内で凍結されているイラン中央銀行の資産から支払う決定を下しており、今回のイランの提訴はこの判決を受けたものです。



2016年6月14日 赤道ギニアがフランスをICJに提訴しました。
 
赤道ギニアの第2副大統領のフランスにおける刑事司法管轄権からの裁判権免除およびパリに存在する赤道ギニアが所有する建物の免除について、フランスによる国際法違反があったとして赤道ギニアがICJに訴訟を提起しました。赤道ギニアは管轄権の根拠としてウィーン外交関係条約の選択議定書(1961年)および国連国際組織犯罪防止条約(2000年)を援用しています。


2016年6月6日 チリがボリビアをICJに提訴しました。
 チリとボリビアの間を流れる河川(Silala River)の地位とその利用をめぐる問題で、チリがICJに訴訟を提起しました。チリは当該河川が国際河川であることの確認、河川の衡平な利用の権利、上流国であるボリビアの越境損害防止義務や通報・協議義務などについて判決することを求めています。管轄権の根拠としてはボゴタ規約31条が援用されています。



2015年5月6日 ICJがオーストラリアに公文書等の返却を求める仮保全措置命令を出しました。
 
オーストラリアの政府関係者がキャンベラにある弁護士事務所から東ティモールの公文書を押収したことで東ティモール側がICJに訴訟を提起していた事件で、ICJは押収した公文書等を同弁護士事務所に返却することを命ずる仮保全措置を下しました。本件では、押収した公文書の開封や使用を禁止する等の内容を含む仮保全措置命令がすでに2014年3月3日にICJによって下されていましたが、今回はオーストラリア側からの命令内容の一部変更要請を受けて、公文書等の返却を命ずる新たな仮保全措置命令を下した形になっています。(※その後、文書はオーストラリアから東ティモール側に返却され、その結果、東ティモールからの要請を受けて2015年6月11日に訴訟は裁判所の総件名簿から削除されました。)


2015年4月25日 国際海洋法裁判所の特別裁判部が暫定措置命令を下しました。
 ガーナとコートジボワール間の海洋境界画定紛争(本年1月12日特別裁判部設置[下記参照])に関してコートジボワールが求めていた暫定措置命令について、国際海洋法裁判所(ITLOS)は25日、ガーナによる係争海域における海底掘削の中止などを含んだ暫定措置を命令しました。



2015年4月2日 国際海洋法裁判所が勧告的意見を下しました。
 国際海洋法裁判所(ITLOS)は、2013年に西アフリカの7か国で構成されている準地域漁業委員会(SRFC)が求めていたIUU漁業(違法、無規制、無報告漁業)に関する勧告的意見を下しました。ITLOSはSRFCに所属する諸国の排他的経済水域(EEZ)におけるIUU漁業の取り締まり義務が当該船舶の旗国にあることを明確に認定しました。もっとも、その義務は「相当の注意」義務にとどまるとされています。従って、旗国がIUU漁業防止のための必要かつ適切な措置をとっていた場合には国家責任は発生しないということになります。その他、ITOSは国際機関(特にEU)の責任発生の可能性や、SRFC諸国の漁業資源保存に向けた協力義務などについても述べています。現在、西アフリカ地域では漁業資源の乱獲やIUU漁業が問題となっており、今回の勧告的意見はこの問題を解決するための重要な視点を提供したと言えるでしょう。なお、ITLOSが全員法廷で勧告的意見を下したのは今回が初めてです。


2015年4月1日 パレスチナが国際刑事裁判所(ICC)に加盟しました。
 4月1日、パレスチナは123番目の加盟国としてICCに加盟しました。これにより、例えば2014年におこなわれたイスラエルによるガザ地区への攻撃やパレスチナ側の武装組織によるイスラエル側への無差別攻撃などが捜査対象となります。



2015年2月3日 「ジェノサイド条約適用事件」(クロアチア対セルビア)の判決が下されました。
 ICJは2月3日、クロアチアがユーゴスラビア(当時)によるジェノサイド行為について同国をICJに訴えていた訴訟について、ジェノサイド禁止条約(1948年)の違反は無かったとする判決を下しました。さらに、被告のセルビア側が主張していたクロアチアによるセルビア系住民に対するジェノサイド行為の主張についても同様の判断を下しました。ICJは、ジェノサイド条約2条の規定からジェノサイドの認定のためには「客観的要件」と「主観的要件」が求められるが、いずれの側にも「主観的要件」、つまり民族集団そのものを破壊する意図が証明されなかったとしています。条約違反が無かったという結論に達した結果、ユーゴスラビアからセルビアへの「国家責任の承継」問題などについては判断されませんでした。



2015年1月12日 国際海洋法裁判所に特別法廷が設置されました。
 1月12日、ガーナとコートジボワール間の海洋境界画定をめぐる紛争を扱う特別裁判部が国際海洋法裁判所(ITLOS)に設置されました。同法廷は3名の裁判官と2名の特任裁判官の合計5名で構成されます。ITLOSが扱う事案はこれで23件目となります。



2014年9月28日 近畿大学の公開講座が開催されます。
 以下の要領で近畿大学の公開講座が開催されます。国際法の歴史や特徴を踏まえ、国際法上の自衛権について解説する予定です。

 日時: 2014年10月11日(土)、10:30〜12:00
 場所: ブロッサムカフェ3階
 テーマ:「国際社会における自衛権−国際法学の立場から」
 講師: 西谷 斉
 定員: 80名(無料)
 ※申し込み方法などは大学のホームページを見てください。


2014年8月28日 ソマリアがケニアをICJに提訴しました。
 8月28日、インド洋の海洋境界画定をめぐってケニアとの間で紛争が生じていたソマリアがICJに訴訟を提起しました。両国はICJ規程36条2項の受諾宣言をおこなっているため、ソマリアはこの規定を管轄権の根拠としています。また、本件は国連海洋法条約の解釈と適用が中心となるため同条約の義務的紛争解決手続も関係してくると思われますが、ソマリアは同条約282条によりICJに付託されるとしています。


2014年4月25日 マーシャル諸島が核保有9か国をICJに提訴しました。
 マーシャル諸島共和国は4月25日、核兵器保有国および事実上保有しているとされている国合計9か国を相手にICJに訴訟を提起しました。核保有国は1968年のNPT(核不拡散条約)第6条の下で核軍縮に向けた誠実な交渉義務を負っていますが、同共和国は核保有諸国がそうした交渉を怠っているとして、それらの諸国に誠実な交渉を命令することをICJに求めています。なお、それら9か国の中にはNPT非加盟国も含まれていますが、同共和国によればNPTの第6条が定める核軍縮の義務は普遍的な義務であるためそれらの非加盟国にも義務があるとしています。ICJが裁判管轄権を行使するかどうか、行使した場合には核削減に向けた「誠実な交渉義務」についてどのように判断するのか、そしてNPT非加盟国の義務の存在を認定するのかどうか、といった点が注目されます。


2014年4月3日 日本がハーグ条約に加入しました。

 4月1日、日本は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(ハーグ条約)に正式に加入しました。今後、日本政府は結婚が破たんした夫婦の一方がが国外へ連れ出した子供について、申し立てがあった場合には一定の手続きを経たうえで元の居住国に戻す義務が生じます。日本の加入によりハーグ条約の当事国は91ヶ国になりました。


2014年4月1日 南極捕鯨事件の判決が下されました。
 3月31日、ICJはオーストラリアと日本が日本による調査捕鯨の合法性について争っていた事件(途中からニュージーランドも訴訟に参加)について判決を下し、現在の調査捕鯨が「科学目的とは言えない」として中止を命じました。


2014年3月19日 ロシアがクリミアをロシア領に編入しました。
 
3月18日、ロシアはウクライナ南部のクリミア自治共和国と条約を締結し、クリミアを自国へと編入(併合)しました。ロシアは住民投票の結果や民族自決権を根拠に国際法上の正当性を訴えているものの、ウクライナをはじめアメリカやEUは、住民投票がウクライナ憲法に違反しており、ロシアによる違法な武力行使の存在やウクライナの領土保全の侵害であるとして反発を強めています。


2014年1月20日 日本が障害者権利条約を批准しました。


2013年11月21日 小笠原諸島に新しい島が出現しました。
 11月20日、小笠原諸島の西之島の南に新たな島が出現しているのを海上保安庁の航空機が確認しました。海底の噴火によるものとみられ、今回は27年ぶりの新島出現となります(その後、新島は拡大を続け、西之島と結合しました)。新島の出現により日本の領域が増加したことになりますが、国際法上、これは国家領域の取得権原の一つである「自然添付」として説明することができるでしょう。



2013年11月11日 「プレア・ビヘア寺院事件の解釈請求」事件の判決が下されました。
 
2011年にカンボジアはICJ規程60条およびICJ規則98条に基づき、プレアビヘア寺院の帰属について同国とタイとの間で争われた1962年の「プレアビヘア寺院事件判決」に対する解釈請求をおこないました。1962年の判決では寺院がカンボジアの主権下にある領域に位置することが認められましたが、今回、ICJははあらためて同寺院がカンボジアに帰属すると判示しましたが、両国が求めていた明確な境界線については判断しませんでした。むしろICJは同寺院が世界遺産であることを指摘しつつ、交渉による紛争の政治的な解決を促しています。


2013年10月10日 「水銀に関する水俣条約」が採択されました。


2013年9月18日 「除草剤空中散布事件」がエクアドルの申請により総件名簿から削除されました。


2013年9月16日 シリアが化学兵器禁止条約に加入しました。
 

2013年7月2日 クロアチアが28番目の加盟国としてEUに加盟しました。



2013年4月30日 ボリビアがチリをICJに提訴しました。

 4月24日、ボリビアは太平洋へのアクセスをめぐるチリとの係争に関し、チリ側が誠実な交渉義務を果たしていないことなどを理由に当該係争をICJに付託しました。ボリビアは、中南米諸国が1948年に締結した「ボゴタ規約」をICJの裁判管轄権の根拠としています。



2013年4月24日 ICJに係属中のニカラグアとコスタリカ間の2つの訴訟が併合されました。
 
4月23日、ICJは2010年に提訴されていた「国境地帯におけるニカラグアの活動」事件(コスタリカ対ニカラグア)と、2011年に提訴された「サンフアン川沿いのコスタリカ領における道路建設」事件(ニカラグア対コスタリカ)を単一の事件として併合する決定を下しました(ICJ規則47条に基づく命令)。訴訟が併合されるのは、「南西アフリカ事件」、「北海大陸棚事件」に続き今回で3度目となります。


2013年4月18日 「国境紛争」(ブルキナファソ/ニジェール)の判決が下されました。
 
4月16日、ICJは2010年に付託されていたブルキナファソとニジェール間の国境紛争について、両国間の係争地域に引かれるべき国境線を判示するとともに、両国の要請に応じて境界画定を補佐するための専門家を指名することを決定しました。ICJは、両国が1960年にフランスから独立した際の国境線を尊重する立場を示した上で、1987年に両国間で締結された条約(植民地時代のフランス省令や独立時の公式地図等に言及している)を踏まえて境界画定を行っています。


2013年4月3日 「武器貿易条約」が採択されました。
 4月2日、国連総会において賛成多数で「武器貿易条約」が採択され(イラン、北朝鮮、シリアは反対。その他23カ国が棄権)、通常兵器の国際取引を規制する包括的なルールが誕生しました。同条約の規制対象となる8種類の武器については、一定の場合に輸出入が禁止されることになります。ただし、対象となる武器の範囲が狭いなど、まだまだ改善の余地はありそうです。



2013年2月13日 「南極捕鯨」事件(オーストラリア対日本)へのニュージーランドの参加(ICJ規程63条)が認められました。


2012年11月19日 「領域及び海洋紛争」(ニカラグア対コロンビア)の本案判決が下されました。
 ICJは11月19日、ニカラグアとコロンビアが島の帰属と海洋の境界画定をめぐり争っていた裁判について最終的な判断を下しました。まずICJは帰属が争われているカリブ海の複数の島嶼について、ウティ・ポシデティス(現状承認)原則が使えないことから両国による実効的な支配(effectivites)を検討し、それらの島嶼がコロンビアに属すると判示します。その上で、ICJは線引きをおこなう海洋部分を決定し、それら島嶼の存在を念頭に置きつつ単一の海洋境界線を引きました。その際には判例上確立しつつある「3段階方式」を採用しています。つまり、@暫定的に中間線を引き、A関連事情を考慮して線を移動させ、最後にB全体的な衡平の観点から再検証する、という方式です。本件では関連事情として海岸線の長さや形状が挙げられていますが、それらに加えて安全保障上の考慮にも言及されている点が特徴的です。なお、天然資源へのアクセスの問題は関連事情に含められませんでした。


2012年7月20日 「訴追するか引き渡す義務に関する問題」(ベルギー対セネガル)の判決が下されました。
 セネガルに滞在中の元チャド大統領に対する訴追/引渡請求をめぐり2009年にベルギーによってICJに提訴されていた事件について、ICJは裁判管轄権を認定した上で、セネガルの国際法違反を認定する判決を下しました。ICJは両国が当事国である拷問禁止条約に基づいて管轄権を認定し、さらに同条約の6条2項(予備調査の義務を規定)および7条1項(容疑者を引き渡さない場合の訴追義務を規定)をめぐる紛争が両国間に存在すると認定しました。訴訟の受理可能性に関してICJは、拷問禁止条約上の義務は「すべての条約当事国に対する義務」(obligations erga omnes partes)であり、したがって条約の当事国であるベルギーには訴訟の当事者たる地位が認められるため事件は受理可能であると判示しました。最終的にICJはセネガルが6条2項および7条1項条の義務を履行しなかったとして同国の国家責任を認定し、義務を履行するための措置をただちにとることを命令しました。


2012年2月3日 「ドイツの主権免除」事件((ドイツ対イタリア [ギリシャ:規程62条に基づく参加])でICJが本案判決を下しました。


2011年12月22日 ニカラグアがコスタリカをICJに提訴しました。
 12月22日、ニカラグアはコスタリカがおこなっている両国の国境地帯を流れるサンフアン川沿いにおける道路の建設作業が、各種の国際義務(自然環境の破壊、ニカラグアの領土保全)に違反しているとしてICJに提訴しました。ニカラグア側は原状回復、金銭賠償に加え、適切な越境環境影響評価をコスタリカがおこなうこと、かつその情報を同国に提供することを求めています。本件はすでにICJに係属している「国境地帯におけるニカラグアの活動」事件(2010年にコスタリカが提訴)と密接な関係があるため、将来的には2つの事件が併合される可能性もあります(※その後、2013年4月に両事件は併合されました)。


2011 年7月20日 プレア・ビヘア寺院事件の解釈請求事件でICJが仮保全措置命令を下しました。
 7月18日、ICJはカンボジアによる仮保全措置の請求を認容し、プレア・ビヘア寺院の周辺に暫定的な非武装地帯を設定した上で、その地区からのタイ、カンボジア両国の兵員の即時撤退を命じました。ICJはタイ側が、カンボジアによる同寺院へのアクセス権や住民への物品の供給を妨害しないこと、タイとカンボジア両国がASEANの枠組内で協力することや紛争の激化を防ぐことなども命じています。


2011年7月14日 南スーダンが独立を宣言しました。
 7月9日、スーダン南部(南スーダン)がアフリカ54番目の国家として独立を宣言しました。アラブ系主体の北部と黒人系主体の南部との間の内戦が、2005年に締結された和平合意によって終了したのですが、その中で独立の是非を問う住民投票を実施することが約束されていました。今回の独立はその手続を受けたものです。スーダンは1956年にイギリス(およびエジプト)から独立しましたが、今回はさらに南部地域の外的自決権が新たに行使されたことになります。国連への加盟も承認されることが確実視されています。ただし、南部スーダンに石油資源が豊富に存在することもあって、北部との間に境界画定問題が残っており、引き続き交渉が行われることになっています。なお、南スーダンにはいわゆる多機能型PKOが派遣されることが安保理で決議されており、現在、日本政府に対しても国連から参加が要請されています。



2011年5月12日 カンボジアがICJに対して判決の解釈請求をおこないました。

 2011年4月28日、カンボジアはICJ規程60条およびICJ規則98条に基づき、プレアビヘア寺院の帰属について同国とタイとの間で争われた1962年の「プレアビヘア寺院事件判決」に対する解釈請求をおこないました。近年になり、同寺院周辺を含む両国の国境地帯では断続的な武力衝突が発生しており、死傷者も出ています。1962年の判決では寺院がカンボジアの主権下にある領域に位置することが認められましたが、今回、カンボジア側はあらためて同判決の内容を確認してもらうことにより自国の正当性を強化することを試み、さらに両国間の交渉を含めた平和的解決の枠組を判決により定めようとしたものと思われます。なお、カンボジアは解釈請求と同時に、プレアビヘア寺院周辺からのタイ軍の撤退などを求める仮保全措置も請求しました。



2011年4月1日 「人種差別撤廃条約の適用」事件(グルジア対ロシア)の先決的抗弁判決が下されました。


 
2008年の夏に南オセチアとアブハジアで発生したグルジアとロシア間の紛争においてなされたグルジア民族に対する攻撃が人種差別撤廃条約に違反するとして、グルジアがロシアを訴えていた事件において、ICJはロシアの先決的抗弁を認める判決を下しました。ICJは紛争当事国間に同条約をめぐる紛争が存在することは認めたものの、同条約22条が定める手続的要件(紛争解決に向けた交渉)が満たされていないとして、管轄権なしと判断しました。グルジアは22条の外交交渉はICJ管轄権発生の前提条件ではないと主張していましたが、ICJは22条のいう「交渉又はこの条約に明示的に定められている手続」は明確な義務(前提条件)であると解釈し、条約の準備作業を検討してもその結論は変わらない、とします。ICJによればグルジアが同条約の適用問題に関してロシアと交渉をおこなった形跡は無く、したがって、22条の手続的要件が満たされていない以上、ICJは管轄権を行使しないと結論付けました。先決的抗弁が認められたため、2008年10月15日にICJが出した仮保全措置(下記2008年10月16日のニュース参照)は効力を失いました。もっとも、両国が引き続き人種差別撤廃条約の規定およびそこに定められている義務に拘束されることは言うまでもありません。



2010年11月20日 コスタリカがニカラグアをICJに提訴しました。


 
11月18日、コスタリカはニカラグアによるコスタリカ領域内での軍事活動および運河建設行為についてICJに提訴しました。コスタリカはニカラグアによる一連の活動が国連憲章や米州機構憲章などが定める武力行使禁止原則の違反を構成し、かつ同国の領域主権を侵害し、さらに運河の建設は関連条約によって定められたサン・フアン川に関するニカラグアの義務違反であると主張しています。特に運河の建設に関し、コスタリカはその行為が同国内の熱帯雨林や湿地帯、生態系に対する深刻な破壊行為であるとしており、関連国際法規則の一つとしてラムサール条約を援用しています。
 管轄権の基礎としては両国が当事国であるボコタ憲章および同じく両国がおこなっているICJ規程36条2項に基づく受諾宣言が援用されています。
 なお、コスタリカは訴訟の提起と同時に仮保全措置命令を要請しました。ICJとしては、まずは管轄権の存在可能性について検討し、それが認められる場合には、つづいてコスタリカの要請−−つまり、ニカラグアによる軍事的占領や運河の建設の停止−−が、緊急性や必要性といった要件を満たしているかどうか、規程41条や過去の判例などを参考に判断することになると思われます。環境破壊の主張については、これまでのところICJが概して適用に消極的である「予防原則」が今回どのように扱われるかが注目されるところです。



2010年7月24日 「コソボによる一方的独立宣言の合法性」についてICJが勧告的意見を下しました。

 
ICJは7月22日にコソボによる独立宣言の国際法適合性について総会から諮問されていた問題について、独立宣言が国際法に違反していないとする勧告的意見を下しました(10対4の票決)。
 
まず管轄権について裁判所は、政治問題の抗弁、安保理の活動との重複性の主張をいずれも退け、管轄権を行使するべきでない「決定的理由(compelling reasons)」が存在しないと述べ、意見を付与することを決定しました。
 次にICJは今回の総会による諮問の要点を、「当該独立宣言が国際法に従ってなされたか否か」という形で定式化しました。
 一方的な独立宣言が「領域の一体性原則」と抵触するとの主張についてICJは、同原則の重要性を認めつつも、それが国家間関係を規律する原則である点を確認しています。また、いくつかの独立宣言(ex.南ローデシア、北キプロス)が過去に安保理によって非難されている点については、それらがすべて何らかの形で強行規範(ユス・コーゲンス)の違反に基づいていたのであって、コソボについては安保理はそうした非難をおこなっていないと述べ、これまでの安保理の実行からは独立宣言の一般的な禁止を導き得ないとしました。さらにICJは今回の諮問内容には国家からの分離独立権の問題は含まれておらず、もっぱら一般国際法および特別法としての安保理決議1244(1999年)に違反したか否かを判断するのみであるとしました。そして裁判所は一般国際法の中に独立宣言を禁止する規則は存在せず、よって問題の独立宣言は一般国際法には違反していないと結論付けました。次に裁判所は特別法としての安保理決議1244およびそこから派生した「コソボ暫定自治の枠組(constitutional framework)」が一方的な独立宣言を禁止していたかどうかを検討します。そして裁判所は同決議の文言や名宛人の詳細な検討の結果、決議は一方的な独立宣言を禁止していないと結論付けました。
 以上のようにICJはコソボの独立宣言がいわば「手続き的に」一般国際法と安保理に違反していないと述べているだけで、コソボに「分離独立する権利があった」とか「コソボは主権国家として承認されるべきである」などとは述べていない点に注意が必要です。日本を含め多くの国(約70カ国)がコソボを国家承認していますが、セルビアとロシアを筆頭に反対国も多いためその国際的地位はいぜん不確定であり、国連への加盟はまだ先の話になりそうです。 



2010年7月22日 ブルキナファソとニジェールが国境紛争をICJに付託しました。

 
7月20日、ブルキナファソとニジェールは両国の特別合意に基づき、両国間の国境紛争をICJに付託しました。特別合意では、ICJへの付託につき両国からそれぞれ特任裁判官(国籍裁判官)を指名すること、係争地域についてICJが国境線を引くこと、ICJの判決を最終的かつ拘束力があるものとして両国が受諾し、具体的な画定作業をおこなうこと、判決の履行について紛争が発生した場合には再度ICJに付託すること、ICJの係属中に両国が紛争を激化させるような措置を慎むこと、などが合意されています。
 なお、ブルキナファソはマリとの国境紛争を同じくICJの裁判(特別裁判部)によって解決した過去があります。そのときと同様に今回の裁判においても、ウティ・ポシデティス原則に基づいて、地図や公文書の存在、行政当局の行為などの実効性がICJによって総合的に判断されるものと思われます。ちなみに、以上で登場した3カ国(ブルキナファソ、ニジェール、マリ)はいずれも昔はフランスの植民地でした。



2010年6月17日 国際刑事裁判所規程の再検討会議が終了しました。

 
6月11までウガンダで開催されていたICC規程の再検討会議は、「侵略の罪」を管轄権に含める改正決議を採択して無事終了しました。ただし、ICCが実際に管轄権を行使することになるのは早くても2017年以降になります。
 侵略の定義について再検討会議は、国連総会が1974年に採択した「侵略の定義」決議の内容に依拠しました。また、侵略の認定と管轄権の発動については、安保理によるICCへの付託に加え、加盟国からの要請に基づくICC検察官による捜査開始を定めています(ただし、後者について加盟国はあらかじめ適用を除外することが可能)。
 同会議はさらに、ICC規程第8条を修正する決議を採択し、国際的な性質を持たない武力紛争における有毒ガス等の兵器使用も戦争犯罪に含める改正をおこないました。また、7年間の適用除外を定める規程124条についてはそのまま維持し、2015年に開催される締約国会議において再度検討を加えることになりました。(以上、再検討会議のプレスリリースより)



2010年6月1日 国際刑事裁判所規程の再検討会議が始まりました。

 
国際刑事裁判所(ICC)規程の締約国(111カ国)による再検討会議がアフリカのウガンダで始まりました。同規程第5条は、集団殺害(ジェノサイド)、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略の罪についてICCが管轄権を行使できる旨規定していますが(同条1項)、そのうち「侵略の罪」については犯罪の定義や構成要件が定められてから管轄権が行使できるとされています(同条2項)。今回の会議には複数の議題がのぼっていますが、特にこの問題を中心に検討がおこなわれそうです。会議は6月11日まで開催される予定で、条約の改正が実現できるかどうか注目されるところです。



2010年6月1日 オーストラリアが日本をICJに提訴しました。
 
 
オーストラリア政府は5月31日、日本が南極海でおこなっている調査捕鯨を停止させるため国際司法裁判所(ICJ)に提訴しました。今後はIWC(国際捕鯨委員会)での議論および日本とオーストラリアの二国間交渉と平行する形で紛争の法的側面における判断がICJの場で−もしICJが裁判管轄権を行使することになれば−おこなわれることになります。




2010年5月12日 国際農業開発基金(IFAD)が国際司法裁判所に勧告的意見を求めました。

 国際農業開発基金(IFAD)は、国際労働機関行政裁判所(ILOAT)が下した判決に関し、国際司法裁判所(ICJ)に勧告的意見の付与を請求し、4月26日、受理されました。
 国連砂漠化対処条約(UNCCD)のグローバルメカニズム(=開発途上諸国が同条約を実施するための資金を調達するために設立された機関)のスタッフであった女性の労働契約の更新が却下され、そのことについてその女性がIFAD(グローバルメカニズムに場所を提供(houses)していた)を相手どりILO行政裁判所に訴えました。ILO行政裁判所は、IFADに女性の復職とその間の逸失利益を金銭補償する内容の判決を下しましたが、それを不満としたIFADは同行政裁判所設立文書の付属書に基づき、ICJに勧告的意見を求めることを執行委員会で決定しました。(なお、同付属書の規定により、この場合の勧告的意見には例外的に法的拘束力が発生します。)
 IFADは主に、ILOATの管轄権、決定における根本的な欠陥の存在について検討することをICJに求めています。
 これまでに国際司法裁判所は24の勧告的意見を付与してきましたが、今回の要請は総会でも安保理でもなく、国連の専門機関によってなされたものであり、しかも国際行政裁判所の判決の再検討を求めている点で珍しいケースだといえるでしょう(これまでにそうした事例は4件しかありません)。



2010 年5月12日 ウルグアイ川製紙工場事件(アルゼンチン対ウルグアイ)の判決が下されました。

 
2010年4月20日、国際司法裁判所はウルグアイが建設した製紙工場についてアルゼンチンが提訴していた事件の本案判決を下しました(同事件で両国が請求した仮保全措置についてはそれぞれ概要を載せてあります(下記、2006年7月と11月の部分を参照のこと))。
 裁判所は、1975年のウルグアイ川の利用に関して両国が締結した条約を検討し、ウルグアイが同条約が定める手続上の義務(通報義務、協議義務など)に違反したと判断しました。しかし、同条約が規定する実体的な義務(水質の保全、生態系のバランス、汚染の防止など)には、主にアルゼンチン側の立証が不十分であることを理由に違法性を認めませんでした。また、裁判所は今回の手続上の義務に関する違反の存在を判決が宣言することによってアルゼンチン側の「満足(satisfaction)」が達成されるとし、アルゼンチン側が求めていた金銭賠償については請求を認めませんでした。
 さらに、問題の工場を解体することの是非に付き、ウルグアイは手続上の義務を違反をおこなったものの、75年条約が定める実体法上の義務には反していなかったことを理由に、工場の解体は適切な救済方法とはいえないと述べ、これを認めませんでした。
 最終的に裁判所はウルグアイに対して問題の工場を責任もって監督するとともに、両国が協力して75年条約の目的である河川の衡平な利用と環境保護を達成するよう求め、そうした協力が義務であることを強調しています。



2010年3月10日 国際判例集が出版されました。

 杉原高嶺・酒井啓亘編『国際法基本判例50』(三省堂、2010年)が2月下旬に出版されました。重要判例を50件収録し、解説を加えたコンパクトな判例集です。すべての判例が4ページ以内に収まっているので事件の概要や論点をすばやくつかむことができます。国際法の学修のお供にどうぞ。



2009年7月20日 航行及び関連する権利に関する紛争(コスタリカ対ニカラグア)の判決が下されました。

 7月13日にICJはサンファン川(River San Juan)の自由航行権その他の諸権利をめぐりコスタリカとニカラグアが争っていた事件につき、コスタリカ側に自由航行の権利を認める一方、ニカラグア側に一定の規制権限を認めたうえで、ニカラグアの行為のいくつかを両国間の条約違反であるとする判決を下しました。両国は、サンファン川の係争区域がニカラグアに帰属することと、そこにおいてコスタリカが自由航行の権利を有すること自体は争ってはなく、争点はもっぱらその具体的な内容をめぐるものでした。
 コスタリカ側の権利について、裁判所は両国間の境界を定める1858年条約の関連条項の文言を解釈し、同条約が一つの法制度(legal regime)を設定したことなどを指摘しつつ、通商(commerce)という文言が物資の移動のみならず、旅客や観光客の輸送も含むと判示しました。さらに一定の場合には政府船舶の航行も認められるとしましたが、警察機能を有する船舶の航行は認められないとしました。また、ニカラグア側の権利について、裁判所はニカラグア側の一定の行政権限(環境保護など)の存在を前提に、川への進入または退出時におけるニカラグア側による停船や臨検の権利、さらに船舶に対してニカラグア国旗の掲揚を求める権利などを認めましたが、ビザの申請や旅行者カードの購入を求める行為、出港許可証(departure clearance certificate)を船舶に購入させる行為は認めませんでした(裁判所は出港許可証の制度自体は認めています)。結論として、裁判所はニカラグアによる上記三つの行為が1858年条約に反していると判断しました。



2009年3月5日 ICCがスーダンの大統領の逮捕状を出しました。

 
国際刑事裁判所(International Criminal Court; ICC)の予審裁判部は、スーダンのバジル大統領に対し、人道に対する罪と戦争犯罪の容疑で逮捕状を発行しました。現職の国家元首にICCから逮捕状が出たのは初めてのことです(この点に関しては、ICC規程の第27条を参照のこと)。これにより、日本を含むICC加盟国(108カ国)には同大統領の逮捕義務が生じることになりますが、大統領がスーダン国内にとどまっている限り身柄の確保や逮捕は困難となるでしょう(スーダンはICCに未加入)。今後スーダンに対して国際的な圧力が高まることが予想されますが、その反面、同国内で展開している国連監視団やNGO等の活動に悪影響が出る可能性もあります。



2009年2月20日 ベルギーがセネガルをICJに提訴しました。

 2月19日、ベルギーはセネガル領域内にいる、人道犯罪をおこなったとされる国際犯罪被疑者(チャドの元大統領)をセネガル政府が処罰せず、またベルギーに引き渡さないことで国際法違反(拷問禁止条約および国際慣習法違反)の行為をおこなったとしてICJに提訴しました。ベルギーはICJに、セネガルには同被疑者を自国で裁く義務があること、そうしない場合にはベルギーに引き渡す義務があることを確認する判決を下すことを求めています。
 同時にベルギー政府は、セネガル政府が同被疑者の自宅軟禁を解く危険性があるとして、ICJに仮保全措置命令も要請しました。ICJは、まずこの仮保全措置命令についてその必要性の有無や管轄権存在の蓋然性について検討し、命令の可否を決定することになると思われます。(※2009年5月にICJはベルギーによる仮保全措置命令の要請を棄却しました。)
 なお、ベルギーは管轄権の根拠として両国の選択条項受諾宣言と両国が当事国である拷問禁止条約を挙げています。




2009年2月13日 黒海における海洋境界画定事件(ルーマニア対ウクライナ)の判決が下されました。

 2月3日、ICJは黒海沿岸の海洋境界画定をめぐるルーマニアとウクライナ間の紛争について、単一の境界画定線を示す判決を下しました。
 まずICJは裁判所の管轄権の存在を確認し、本件に適用される法が「合意による衡平な境界画定の達成」を定める国連海洋法条約の74条と83条であることを示します。さらに、74条と83条にいう「関係国間において効力を有する合意」が存在しない(大陸棚や排他的経済水域の境界画定に関する合意が存在しない)ことも確認します。
 つづいてICJは境界画定の基準となる紛争当事国それぞれの海岸線(relevant coasts)および海域(relevant maritime area)を決め、その上で、暫定的な等距離中間線(provisional equidistance line)を引きました。その後、裁判所は「衡平な解決」を達成するために様々な関連要素を考慮に入れ、その中間線を調整又は移動させる必要性の有無を検討しましたが、結論としてその必要がないと判断しました。
 結果として、ICJは両国の海岸線の形状(岬の存在等)を考慮しつつ、当初ルーマニアが主張していた境界画定線の北側部分を、ルーマニア側に多少押し戻す形で単一の境界画定線を引きました。
 本件でみられたような「海岸線の形状に鑑みた暫定的中間線プラス関連事情(海岸線の長さ等)による調整」方式は海洋境界画定事件におけるICJの基本的態度として確立していることがあらためて示された判例だといえるでしょう。




2008年12月23日 ドイツがイタリアをICJに提訴しました。

 
第二次大戦中に強制労働をさせられるなどの被害を受けた個人がドイツ政府を相手にイタリアの国内裁判所に訴え、一連の裁判において裁判所の管轄権が認められていた問題で、ドイツ政府は2008年12月23日にイタリア政府をICJに訴えました。ドイツによると2004年3月に下されたFerrini事件のイタリア破棄院(Corte di Cassazione)判決をきっかけに、大量の訴訟がドイツ政府を相手に同様の被害を被った個人によってイタリア国内で提起されるようになり、今後もその数の増加が予想されるとのことです。
 国際法上、国家には主権免除が認められているため、特に公的性質を有する行為に関しては外国の国内裁判所において被告として裁かれることはないというのが原則です。今回ドイツはこの国際法上の権利が侵害されたとしてイタリアをICJに訴えました。
 ICJの裁判管轄権の基礎としては1957年の紛争の平和的解決に関する欧州条約第1条が援用されています。さらにドイツによれば、本件の紛争はECJの事項的管轄権の類型に該当しない一般国際法上の紛争であるため、本件は欧州司法裁判所(ECJ)ではなく、ICJで裁かれるべきだということです。なお、ドイツはイタリアが「主権免除原則についてICJに訴訟を提起するドイツの決定を尊重する」旨確認している2008年11月の両国の共同宣言も同時にICJに提出しています。




2008年11月19日 ジェノサイド条約適用事件(クロアチア対ユーゴスラビア)の先決的抗弁判決が下されました。

 ICJは11月18日、セルビアによって提起されていた先決的抗弁をすべて棄却する判決を下しました。
 裁判所はセルビア側によって主張された、当事者適格性の欠如、ICJの当該紛争に対する事項的管轄権(ratione materiae)、時間的管轄権(ratione temporae)に関する抗弁を順に検討していきます。クロアチアが援用する管轄権の根拠はジェノサイド条約第9条でしたので、裁判所はまずセルビアがICJ規程の当事国であるかどうかを確認し、その上で訴訟が提起された当時にセルビアがジェノサイド条約の当事国であったか否かを検討しました。
 ICJが以前の判決でも認めていたように、新ユーゴ(現セルビア)は1992年から2000年の間、「特殊な」法的地位に置かれていました(当時、新ユーゴはユーゴスラビアの承継国とはみなされず、2000年になって改めて国連に加盟申請をした経緯があります)。その間およびこれまで、ICJは新ユーゴが関わったいくつかのケースについて判断を下してきていますが、クロアチアとの間に争われたケースは存在しないため、それらは既判事項(res judicata)としての効力が存在しないことが確認されました。しかしながら、ICJはこれまでに下されてきた新ユーゴの法的地位、そして同国と国連及びICJとの関係に関する一連の法的判断を基本的に踏襲する立場を表明します。
 はじめにICJはユーゴスラビアの承継国がセルビア共和国であることを確認し、この点での当事者適格性を認めます。次に、訴訟が提起された1999年当時、セルビアが国連に加盟しておらず、従ってICJ規程の当事国でもなかった点については、ICJはセルビアによる2000年の国連加盟により、足りなかったICJの管轄権が後に補完された(あるいは治癒された)との立場を示します。ICJはマヴロマチス事件等を援用しつつ、訴訟経済の観点から、あるいは本件特有の問題状況に鑑みた「リアリズムと柔軟性」の面からこうした論理が正当化されるとしています。こうしてICJはセルビアに対する一般的な管轄権を承認しました。[※ただし、複数の裁判官が反対意見の中でこのICJの結論を強く批判しています。例えば小和田判事は多数意見が援用するマヴロマチス事件をはじめとする過去の判例は、あくまでも管轄権に関する国家の合意の問題に限定されていたのであり、それらを当事者適格性を含むあらゆる訴訟手続上の瑕疵の治癒のために援用するのは間違いであるといった点を中心に明確にかつ説得力をもって批判しています。2004年の「武力行使の合法性事件」においては、新ユーゴスラビア(現セルビア)がICJ規程当事国ではないという理由で相手国の先決的抗弁が認容されたこととの整合性も今後問題になる可能性があります。]
 次に事項的管轄権に関して、ICJはセルビアが訴訟が提起された1999年の時点でジェノサイド条約の当事国であったかどうかという点について検討します。この点については、新ユーゴが1992年に行った宣言に一定の法的効果(条約承継効果)を認める形で同条約の当事国となったと判断しました(セルビアは2001年にジェノサイド条約に加入しましたが、それ以前から同国はジェノサイド条約上の義務を負っていたことになります)。
 時間的管轄権の抗弁についてはもっぱら先決的な性格ではない(本案の問題に関わってくる)として最終的な判断を下しませんでした(セルビアは他にも追加的な抗弁をいくつか提起していましたが裁判所はこれらについても同様の判断を示しています)。
 先決的抗弁が棄却され、ICJの管轄権の存在が確認されたことから、今後は本案に向けた訴訟手続が開始されることになります。



2008年11月18日 マケドニアがギリシアに対する訴訟を提起しました。

 11月17日にマケドニア旧ユーゴスラビア共和国(FYROM)は、ギリシアとの間で1995年に締結された暫定合意(Interim Accord)にギリシアが違反したとしてICJに訴訟を提起しました。
 両国間にはマケドニア旧ユーゴスラビア共和国が独立した直後から国名をめぐる激しい対立が存在してきました。憲法上の国家名は「マケドニア共和国」なのですが、ギリシアにもマケドニアという地方が存在しており、「マケドニア共和国」という名称が自国に対する領域的野望を髣髴とさせること、また、アレクサンダー大王を輩出した古代マケドニアに対する愛着といった理由からギリシア政府は独立当初から激しい抗議を行っていました。1993年に国名を暫定的に「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国(FYROM)」とすることで妥協が成立し、それに伴って各国が国家承認を行いました。日本は同年12月にマケドニア旧ユーゴスラビア共和国として国家承認しています。しかし、国際社会には「マケドニア共和国」として国家承認した国も存在しているようです。
 今回の紛争は、FYROMが北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請したところ、ギリシアが拒否権を行使したことに端を発しています。暫定合意11条は、FYROMという国家名称で加盟しようとする限りは、ギリシアがFYROMの国際機関への加盟に反対しない義務を定めており、ギリシアの行為はそれに対する侵害行為であるとFYROM側は主張しています。ギリシア側は憲法上の名称である「マケドニア共和国」に関する相違を解決することがNATOに加盟する前提条件であるとの立場です。FYROMはNATOへの加盟申請を「マケドニア共和国」ではなく、FYROMの名称で行っており、その限りではギリシアが反対する理由は暫定合意第11条に照らせばないようにも思えるのですが、マケドニア国内にセルビア系を中心とした「統一マケドニア主義」という民族主義が存在しているのも確かであり、ギリシアとしてはそのあたりの懸念もあるのかもしれません。いずれにせよ、ICJは両国の主張を聞いた上であくまでも法的な立場から判断を下すことになります。場合によっては両国に再度交渉を命じるかもしれません。なお、FYROMは枠組合意21条をICJの管轄権の根拠として援用しています。




2008年10月16日 グルジア問題に関してICJが仮保全措置命令を下しました。

 ICJは10月15日、グルジアとロシア両国に対して仮保全措置命令を下しました。グルジア領域内においてロシアがグルジア人等に人種差別的行為をおこなったとしてグルジアが人種差別撤廃条約を根拠に仮保全措置を求めていたことに応じたものです(9月2日のニュースを参照のこと)。
 まず裁判所は付託された係争事項が人種差別撤廃条約22条の範囲内にあるかどうかについて検討します。グルジアもロシアも同条約の当事国であることを踏まえつつ、同条約の普遍的性格、両国間の紛争が同条約の解釈に関する紛争であるか否か、付託前の交渉の存在、といった諸点を検討した結果、prima facie(ラテン語で“一見すると”)の管轄権の存在を認定します。
 管轄権の存在が一応認められたことを受け、次に裁判所は仮保全措置を下すための諸要件、すなわち本案との関連性、回復不可能な権利の侵害の存在、緊急性と必要性の存在、について検討し、これらの要件が満たされていることを確認しました。
 その結果、裁判所は両国に対して人種差別行為を停止し、またそのような行為を援助/助長する行為を慎み、住民の身体的安全、移動の自由と定住権、難民や避難民の財産の保護、人道援助の確保、紛争を拡大させるような行為の禁止、仮保全措置命令に従ってとった措置の報告、などの命令を下しました。
 今後裁判所は管轄権の存在についてあらためて両国の主張を聞きながら検討し、正式な判断を下すことになります。




2008年10月14日 国連総会がICJに勧告的意見を要請しました。

 
国連総会は10月8日、コソボによる一方的な独立宣言についてICJに勧告的意見を要請する決議(A/RES/63/3)を採択しました。総会は、「コソボ暫定自治政府による一方的な独立宣言が国際法に従っているか」という点について勧告的意見を求めています。
 コソボ自治政府議会は2008年2月17日に独立を宣言し、多くの欧米諸国が国家承認をおこないました(日本政府は3月18日にコソボを国家承認)。しかし、セルビアとロシアは独立宣言が国際法違反であるため無効との立場をとっています。
 国連総会は「いかなる法律問題についても」勧告的意見を要請することができ(憲章96条1項)、ICJはそれに対して勧告的意見を「与えることができる」とされています(ICJ規程65条)。意見の付与は義務ではありませんが、ICJはこれまで要請を断る「決定的理由」が存在しないかぎり意見を付与をする立場を貫いてきました。また、当該問題が政治問題であるとの抗弁が出された場合においても、その法的側面(法律問題)を扱うとして積極的に意見を付与してきています(ex.核兵器勧告的意見、パレスチナの壁勧告的意見)。
 独立宣言とそれに対する国家承認の法的効果の問題については現在宣言的効果説が通説的な位置づけを受けていますが、その政治性の故、廃止論や政治的行為説の主張も目立ってきています。今回、ICJが勧告的意見を下すことを決定した場合には、その中でこの問題についてどのような判断をおこなうかが注目されます。さらに、この問題はロシアによるグルジア領域内の南オセチアとアブハジアの国家承認の問題とも「ロシア」・「民族自決権」という二つの接点において関連性があるため、その意味でもその判断が注目されるところです。




2008年9月2日 EUがグルジア問題を理由にロシアとのパートナー協定交渉を凍結しました

 
EUは9月1日に緊急首脳会議を開き、現在進められているEUとロシアの協力協定の交渉を凍結することを決定しました。8月8日に発生したロシアによるグルジア侵攻とその後の占拠状態に対してEUが明確なメッセージを示したことになります。もっとも、EUとしてもロシアとの決定的な対立を望んでいるとは考えられず、今後もグルジア問題の解決に向けてロシアとの対話は継続していくと思われます。
 
グルジア領域内に存在する南オセチア自治州とアブハジア自治共和国は独自の統治機構を備えており、90年代前半に独立宣言もおこなっています(新聞報道などによれば両地域はいずれも「親ロシア派」が多数を占めているということです)。国際社会はグルジアの領域主権(領土保全の原則)を尊重し、国家承認はおこなっていませんでした。
 
2008年8月7日、グルジア軍がグルジア住民を守るため、分離独立派との軍事衝突が発生していた南オセチアに侵攻しました。それに対し
ロシアはその翌日、南オセチアのロシア系住民の保護、グルジアによるジェノサイド行為を理由にしてグルジア領内へ侵攻し、さらにアブハジアへも戦火は拡大していきました。その後、ロシアとグルジアは和平協定を締結しましたが、ロシアは「平和維持」のために自国軍隊を依然としてグルジア領内にとどめており、EU諸国と米国は領域からの撤退をロシアに求めています。また、8月26日にロシアは南オセチアとアブハジアを国家承認し、両地域を今後は国家として扱うことを明らかにしています。南オセチアについては、将来的にはロシア領域内にある北オセチア共和国への編入も視野に入れているようです。今回のEUによる措置はロシアに対するEUの明確な抗議の意思を示したものであり、それに対してロシアがどのように反応し、事態が推移していくのか今後の展開が注目されるところです。

 
今回の問題は法的には、領土保全の原則と民族自決権の対立、国家承認の法的・政治的機能、未承認国家の法的地位、自国民救済のための自衛権の行使、人道的介入(ジェノサイド行為の停止のための武力行使)といった論点が関わってくると思われます。しかしこの問題は、グルジアの地政学的重要性、係争地域をめぐる歴史的な経緯、石油資源の争奪、ロシアが進めるエネルギー外交、NATOやEUの東方拡大に対するロシアの危機感、ウクライナとグルジアのEU/米国への接近、といったその他の要素も深く関わっていることに留意しなければなりません。一部には「新冷戦」が始まったとの論調もみられますが、20世紀の後半を支配した二極間の冷戦構造とは質的に異なるように思われ、さらなる分析を待つべきでしょう。
 なお、8月8日の侵攻を受けてグルジアは8月12日に人種差別撤廃条約の規定(第22条)を根拠としてロシアをICJに訴え、さらに8月14日には仮保全措置命令を求めています。近いうちにICJは裁判管轄権の存在、仮保全措置命令の必要性の有無について当事者の主張を考慮しつつ判断することになるでしょう。



2008年6月9日 杉原高嶺先生の『国際法学講義』が出版されました


 
すでにご存知の方も多いと思いますが、本学法科大学院教授で、学部でも講義を担当していらっしゃる杉原高嶺先生の著書がこのたび有斐閣から出版されました。
 先生の長年に渡るご研究の集大成とも呼ぶべき重厚な体系書となっています。ぜひ一度手にとってその「重み」を感じてもらえればと思います。各種国家試験や新司法試験の国際法科目を受験予定の諸君は傍らに置いておくことをお勧めします。




2008年6月5日 「刑事共助問題」事件(ジブチ対フランス)の判決が出ました

 
ICJは6月4日、ジブチが刑事手続上の協力義務違反などの理由でフランスを一方的に訴えていた事件(後にフランス側が管轄権を受諾)で、最終的な判断を下しました。
 ジブチとフランスは1986年に刑事共助に関する二国間条約を締結していました。今回の紛争はジブチ共和国がフランスに発送した一連の嘱託書(letters rogatory)の執行がフランス当局によって拒否されたことから生じました。
 ICJは、管轄権の具体的範囲を決定した後、1986年条約に照らしながらフランスによる義務違反の有無を検討します。同条約の2条(c)は、国家の本質的な利益を侵害する恐れがある場合には、嘱託書の執行を拒絶することができる旨定めています。ICJはこの条項の援用を認めました。しかし、同条約17条はそうした場合には拒絶した理由を示す義務を定めており、フランスはジブチに対して理由を示さなかったため、その点ではフランスが17条が定める義務に違反したことを認定しました。
 その他、ジブチは国家元首等が有する免除権に対する侵害も主張していましたが認められませんでした。
 結論として、ICJは、国家の本質的利益侵害の危険を理由としたフランスの拒否理由が1986年条約2条(c)によって認められるものの、その理由を明示しなかったことは同条約17条に違反すると判断しました。さらにICJは、この違反認定自体がジブチにとっては国家責任解除の方式の一つである「満足」(satisfaction)を構成すると判示しました。
 なお、この事件はICJの裁判管轄権が発生した態様が特徴的です。本事件の裁判管轄ははジブチがフランスを一方的に提訴し、それをフランスが認める形(2006年7月)で成立しました。古くは1928年の「上部シレジアのドイツ人権益事件」や1948年の「コルフ海峡事件」で認められた、こうした方式を「応訴管轄」といいます。この方式は1978年に導入されたICJ規則の38条5項で認められていますが、これまでそれに基づいて管轄権(応訴管轄)が発生したことはありませんでした。今回、ICJの判例史上初めてこの規則38条5項が実際に機能したことになります。




2008年5月30日 クラスター爆弾禁止条約が採択されました

 
多数の子爆弾によって広範囲を破壊することが可能な「クラスター爆弾」は、不発弾が市民や子どもたちを殺傷することで人道上問題があるとされてきました。このクラスター爆弾を禁止する条約が、5月30日、正式に採択されました。今年の12月に署名式が予定されていますので、発効は来年以降になりそうです。
 今回の条約は、ミドルパワーと呼ばれる諸国とNGOが手を取り合って条約作成を主導するスタイルで作成されました。ノルウェーが中心となったことから、「オスロ・プロセス」と呼ばれています。同様の方式は、1997年の対人地雷禁止条約でも用いられています(その時はカナダが主導したので「オタワ・プロセス」と呼ばれます)。
 条約では、自爆装置を完備した一部の最新型の爆弾を除き、ほぼすべての既存のクラスター爆弾が禁止されます。日本は防衛上、クラスター爆弾の重要性を強調する立場でしたが、一転、署名へと方針を転換しました。条約を批准する前に、自衛隊が保有しているクラスター爆弾を全面廃棄する必要性が生じてくるでしょう。
 今後の問題は、現在参加意思を表明していない、米国、ロシア、中国、といった諸国に対して、どのように働きかけていくのかという点です。これらの諸国は保有国であると同時に主要な生産国でもあります。なお、例えば条約の拘束を受けない米軍と条約に参加している日本の自衛隊の共同作戦の際に、米軍が保有するクラスター爆弾を使用することができるのかどうか、という問題点がありますが、この点は条約に当初存在した禁止規定が削除されたことから、可能であるということになるでしょう。「人道という普遍的価値」と「軍事的・戦略的な重要性」の間の妥協の産物だといえます。
 こうしていくつかの抜け穴は存在するものの、NGOや中小国が国際世論を先導して条約作成を目指す今回のようなスタイルは、今後も利用されていくはずです。もっとも、大国を置き去りにした条約形成は、条約形成が比較的容易となる反面、成立後の実効性の点で様々な困難に直面する可能性があることも忘れてはならないでしょう。



2008年5月27日 「ペドラ・ブランカ/プラウ・バツ・プテー、中岩、南暗礁脈に対する主権」事件(マレーシア/シンガポール)の最終判断をICJが下しました

 5月23日、シンガポール海峡に位置する三つの島などについてマレーシアとシンガポールが主権の存在を争っていた事件で、ICJは、ペドラ・ブランカ/プラウ・バツ・プテーはシンガポールに、中岩はマレーシアにそれぞれ帰属する旨判決を下しました。
 まず裁判所はそれぞれの島嶼および低潮高地について両国間における紛争発生期日を定めたうえで、歴史的な権限およびその変遷について検討しました。
 ペドラ・ブランカ/プラウ・バツ・プテーについては、当初は現在のマレーシアに属していたものの、19世紀中葉以降の当事国の国家実行を検討した結果、裁判所は特に1953年に交わされた書簡の存在を重視し、同島嶼がその頃までにはシンガポール領として認識されていた証拠としました。さらに1953年以降もマレーシア側からの抗議が存在しなかった点も考慮に加えた上で、紛争が顕在化した1980年当時は同島嶼がシンガポールに帰属していたと判断しました。
 中岩については、ペドラ・ブランカ/プラウ・バツ・プテーについて見られたような一連の国家実行がなく、したがってマレーシアが歴史的に有していた権限が引き続き認められる旨判断が示されました。
 低潮高地である南暗礁脈(South Ledge)について裁判所は、それがペドラ・ブランカ/プラウ・バツ・プテーと中岩の存在に基づき設定される領海が重なる部分に位置しているが、裁判所は本事件において領海の画定までは両当事国に求められていなかったとして、南暗礁脈については、そこを含む領海を有する国が帰属先となる旨指摘するにとどめました。
 本判決は、シンガポールによる領海の捜索やマレーシアが調査する際のシンガポールによる許可といった国家実行に主権性を認めています。さらに、国旗の掲揚や軍事施設の存在、地図の出版といった事実に対する抗議の欠如もポイントになったと思われ、あらためて相手の行動(とりわけ主権性を帯びた行為)に対する抗議を含むリアクションが領域に関する紛争において重要であることが伺われる内容となっています。領有権問題をいくつか抱える日本にとっても示唆的です。



2008年5月27日 シエラレオネ特別法廷控訴審が判断を下しました

 5月22日、シエラレオネ特別法廷(SCSL)の控訴審(Appeals Chamber)は、AFRCと呼ばれる軍事組織のリーダー3名に対し、人道に対する罪、戦争犯罪、その他国際人道法の深刻な違反、を認定した原審の判断を全会一致で支持しました。
 本判断で重要な点は、15歳未満の児童を兵士として徴用又は徴募した事実を国際人道法の深刻な違反として認定した点です。これは様々な国際刑事法廷において初めてのことと思われます。今回の認定は世界に30万人以上存在すると言われる児童兵の問題に少なからず影響を与えるでしょう。
 さらに本判決は、強制的な結婚(forced marriage)が新たな形態の人道に対する罪であることを認めた点でも特徴的です。本判決の原審では、性的奴隷をはじめとする性的犯罪に強制的な結婚も含まれるとしていたのに対し、本判決では、「その他の非人道的な行為」という文言を解釈する上でニュルンベルク憲章にまでさかのぼってその起草趣旨を確認しました。また、検察側は「法がなければ罰せず」の要件を満たすため、強制的な結婚が非人道的行為(人道に対する罪)であるとする慣習国際法の存在を主張していましたが、裁判所はその主張を認めました。これらを踏まえ裁判所は原審の判断を覆し、強制的な結婚を単なる性的犯罪とは区別して独自のカテゴリーとして扱いました。この判断については今後研究者等による論評の対象になるかもしれません。いずれにせよ、本判決がシエラレオネ内戦中に男性の「所有物」とされ、肉体的・精神的に傷を負った数多くの女性たちにとってひとすじの心の支えとなることを願います。



2008年5月8日 春季学術講演会のご案内
(講演会は無事終了しました)

 

 法学部春季学術講演会が下記の要領で開催されます。奮ってご参加ください。

  講師 ゲロルト・アメルンク氏(在大阪・神戸 ドイツ連邦共和国総領事館総領事)

  
演題 「EUにおけるドイツ −ドイツの目からみたヨーロッパ統合−」

  
期日 5月20日(火)
  時間 16:30〜18:00
  場所 20-1教室

  
※講演はドイツ語で行われますが、総領事館のスタッフによる通訳が付きます。



エクアドルがコロンビアに対する訴訟をICJに提起しました(2008年3月31日)

 
エクアドル政府は3月31日、コロンビアによる有毒な除草剤の散布により自国民および国内の農作物・自然環境等に損害を被ったとして、コロンビアをICJに訴えました。
 エクアドルは、コロンビアが国際法違反をおこなったことの宣言(国家責任の認定)と、エクアドルに対する損害賠償、同国の主権尊重、将来にわたる予防措置を請求しています。また、管轄権の根拠としては1948年の「ボゴタ憲章」および1988年の「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」を援用しています。
 コロンビアはエクアドルとの国境付近に存在するコカやケシのプランテーションを取り締まるために除草剤を散布したとされており、したがって本案における争点は、「領域使用の管理責任の原則」(因果関係や相当の注意義務をめぐる判断)、通報・協議義務の履行、麻薬撲滅に向けた国際的な取り組み(テロリストやゲリラの資金源を絶つことも含む)の法的義務の評価、といった点になりそうです。


コソボ自治州が独立を宣言しました(2008年2月20日)。
 セルビア共和国南部に位置するコソボ自治州の議会は、17日、セルビアからの独立を宣言しました。ただ、セルビアおよびロシアの反発が強いこともあり、5年から10年の暫定期間を設け、EU主導による国際的な管理体制(文民支援隊、国際治安部隊など)の下に置かれる予定です。
 2月18日には早くもフランス、イギリス、アメリカの各国がコソボを国家承認しました。日本政府も近いうちに承認すると思われます(※その後、同年3月18日に国家承認を行いました)。欧州の中で民族問題を抱える国のいくつか(スペイン、キプロスなど)は国家承認を拒否している状況です。そうした事情もあり、EUはEUとしての独立宣言の評価は避け、国家承認をEU加盟国の独自の判断にまかせているようです。

 
今回の独立宣言は領域内の共和国ではなく「自治州」が独立を達成したという意味で、極めて特殊なケースであるといえるでしょう。コソボは99年以来国連の暫定統治下にありましたが、国連による提案に沿って独立の準備を進めてきました。今回の独立宣言は、国家の領域的一体性と民族自決権(外的自決・内的自決)の関係が、国際社会の介入により、独立の前後において政策的に一定の方向へ調整されうることを示した事例だといえそうです。なお、コソボの国連加盟についてはロシアが拒否権の行使を明言していることから当面実現しないと思われます。


ペルーがチリに対する訴訟をICJに提起しました(2008年1月16日)。
 
ペルー政府は1月16日、同国とチリとの間の海洋の境界画定問題について、ICJに訴訟を提起しました。
 ペルー側によれば、1980年以降、チリとの外交交渉を試みてきたが、チリ政府は交渉をことごとく拒絶してきたため、2004年にチリ政府から送られた書簡により外交交渉の試みは困難と判断し、法的な手段に訴えたということです。
 ペルー側は、両国間の海洋境界画定についてはいかなる合意(条約)も存在しないため、慣習国際法に基づいて判断し、その結果として200カイリ以内の水域に対するペルーの排他的な主権的権利が存することを確認することを要求しています。
 なお、ICJの裁判管轄権の根拠としては、両国が留保なしで当事国となっている1948年のボコダ憲章が援用されています。




領域及び海洋紛争事件(ニカラグア対コロンビア)の先決的抗弁判決が下されました(2007年12月13日)。
 結果=一部認容。
 ニカラグアがカリブ海西部のサン・アンドレス諸島を含む領域に対する主権を主張していた事件で、ICJは同国が1928年にコロンビアと締結した条約によって三つの島の帰属は確定しており、法律上の紛争が存在していないため管轄権がない旨判断を下し、残りの島嶼の帰属および海洋の境界画定の問題についてのみ管轄権を有すると判断しました。
 ニカラグアは1928年条約が同国の憲法規範に反して締結されたこと、および締結当時同国を支配下においていた米国の強い影響力により締結せざるを得なかったことを根拠に同条約の無効を主張しました。しかしICJは過去50年間ニカラグアが同条約を有効なものとして扱ってきた点をとらえ、同条約は有効であると判断しました。

 
裁判所はつづいて、同条約がサン・アンドレアス諸島を含む領域に関して解決しているか否かについて検討し、その結果同条約によって一部の領域(サン・アンドレス、プロビデンシア、サンタ・カタリナの各島)の帰属は解決されていると判断しました。しかし、群島の範囲の問題や、1928年条約が対象から除外した諸島の帰属問題、および両国間の海洋の境界画定については依然として解決されておらず、よってニカラグアおよびコロンビア両国も当事国である1948年のボゴタ条約にしたがって裁判所の管轄権が存在すると判断しました。ニカラグアはICJ規程36条2項の受諾宣言も管轄権の根拠に据えており、それに対してコロンビアは反対(第二抗弁)していましたが、ICJは上記した、一部の問題について管轄権が存在するとの判断により、この問題の検討の必要性は失われたとして詳細には踏み込みませんでした。
 



カリブ海における海洋画定事件(ニカラグア対ホンジュラス)の判決がICJにより下されました
(2007年10月8日)
 
隣接した国同士である中米のニカラグア(南側)とホンジュラス(北側)が、カリブ海側における海洋画定と一部の島嶼に対する領域主権の存在について争っていた事件で、ICJが最終的な判断を下しました。
 ニカラグアは、これまで両国間には確定的な海洋境界線が存在しなかったとして、領海、排他的経済水域、大陸棚を両国間で分ける単一の境界線を引くよう裁判所に依頼しました。一方のホンジュラスは、両国がスペインの支配から独立した際の境界線が慣習的に認められており、ウティ・ポシデティスの原則に従ってそれを裁判所は確認するよう依頼しました。
 
さらにニカラグアは、北緯15度線までの一部の島々の領有権も主張しました。ホンジュラスはそれらがホンジュラスの領域であることを確認するよう求めました。ニカラグアの主張はあとから付け加えられたものでしたが、裁判所は当初の主張との関連性を認め、この点についても判断することを決めました。
 まず裁判所は、ウティ・ポシデティスの原則について、それが両国の宗主国であったスペインから独立した際の領域の境界画定の基本原則となることを確認し、さらにそれが島嶼の領有を含む海洋の境界画定にも適用されることを確認します。しかし裁判所は、争われている島々および海洋の画定線の承継について十分な証拠を両国が提出できなかったとして、この原則の適用による解決を断念します。
 そこで裁判所は、まずは島々の帰属について、独立後の両国の国家実行を検討し、effecivite(主権の行使による実効的支配)の優劣を判断しました。結論として、裁判所はホンジュラスが自国の刑法や民法を適用し、移民、漁業および建築の規制をおこなってきた点を評価して、係争の対象となっていた島々がホンジュラスに帰属するとしました。
 海洋の境界画定について裁判所は、ウティ・ポシデティスの原則も適用できないし、両国間に黙示の合意も存在していなかったとして、自らが線引きすることを決めます。裁判所は、両国を隔てる岬の地形が複雑であることと、同じく両国を隔てる川の河口の地形が絶えず変化する特性を有している点に鑑みて、等距離中間線方式ではなく、両国の向かい合った海岸線の平均的な形状を考慮した二等分線方式を採用し、具体的な境界線を画定しました。また、河口部分で土砂が東に向けて徐々に堆積していることから、裁判所は距岸3カイリの地点から二等分線を引くこととし、二等分線の開始点については両国が誠実に交渉をして定めるよう指示しました。



第3回「ZERI's Life」のご案内(8月6日)
 
下記の要領で第3回のゼリズライフをおこないます。今回のテーマは「洗剤」です。小学生を招いて簡単な実験をする予定です。皆さんも一緒に洗剤の「潜在」的な問題について考えてみませんか?興味のある方は、hitoshi@volkerrecht.jp 又はNPO法人ZERIエデュケーション・ジャパン事務局(下記ホームページより「問い合わせ」)までどうぞ。

 
−第3回ZERI's Life

日時: 2007年8月25日(土)、14:00〜16:00
会場: 鎌倉市福祉センター 
参加費: 無料
主催: NPO法人ZERIエデュケーション・ジャパン



第2回「ZERI's Life」のご案内(5月14日)

 今年の2月に「ZERI's Life−あなたの生活は?」と題して開かれた第1回に引き続き、来る6月2日、東京で第2回のZERI's Lifeを開くことになりました。
 今回は、アジアの環境保護活動をおこなっている獣医師の坪内氏をお招きして、活動内容に関していろいろな話を聞きます。坪内氏はボルネオ保全トラストの活動統括責任者として、ボルネオと日本を一ヶ月ごとに往復する生活を送っています。
 ボルネオ保全トラストについて詳しくはこちらをどうぞ。


 −第2回ZERI's Life

日時: 2007年6月2日(土)
会場: サラヤ株式会社 東京本社 会議室
時間: 14:00〜16:00
参加費: 無料
主催: NPO法人ZERIエデュケーション・ジャパン

 詳しい案内はこちらをどうぞ。
 



 ジェノサイド条約適用事件(ボスニア・ヘルツェゴビナ対ユーゴスラビア)の判決がICJにより下されました(2月26日)
 旧ユーゴ紛争の最中に発生した大規模な人権侵害行為・ジェノサイドの責任がユーゴスラビアにあるとして、ボスニア・ヘルツェゴビナが同国を訴えた事件(ジェノサイド条約適用事件)で、このたびICJが本案判決を下しました。以下、簡単に紹介しておきます。
 
 今回ICJは、ユーゴスラビアを引き継いだセルビア政府自身がジェノサイド行為をおこなったとはいえないものの、セルビアがジェノサイド禁止条約上の一定の義務に違反し、加えて同国が旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)への容疑者の引き渡しをおこなわなかったことも同条約に違反していると判示しました。ただし、ボスニア政府が求めていた損害賠償については認めませんでした。
 
 ICJはまず、セルビアを被告国として認定しました(ユーゴスラビアは「セルビア」と「モンテネグロ」という二つの共和国から構成されていましたが、2006年にモンテネグロが主権国家として独立したため、この点を明らかにしておく必要がありました)。セルビアは2000年に同国が国連に加盟したことをとらえて、1993年にボスニア・ヘルツェゴビナが提訴した際には国連の加盟国ではなく、したがってICJ規程も受諾していなかったことになると主張しました。しかし、ICJはすでに1996年の段階の判決で、管轄権がある、との判断を下していることから、今回はそれが既判事項(res judicata)である、としてセルビアの主張を棄却しました。
 ICJは管轄権の基礎をジェノサイド禁止条約第9条に求めました(したがって、今回の判決でICJはもっぱら同条約上の義務についてのみ判断しています)。セルビアは、ジェノサイド行為をおこなった「国家」の責任を問うことは、ジェノサイド条約では認められない、と主張しましたが、ICJはその主張を受入れませんでした。また、ICJは「ジェノサイド」と「民族浄化」を区別し、前者には一定の人間集団(民族、人種、宗教などにより積極的に特徴付けられた集団)の全部又は一部を破壊する意思を伴っている必要があるとしました。
 以上を受けてICJは、ボスニア・ヘルツェゴビナによって提示された証拠を検討しつつ、セルビアに援助を受けていた急進的な団体がそうした行為を実際におこなったのかどうかということと、その行為があったことが確認された場合には、それがボスニアのイスラム教徒たちを消滅させる意思を伴う行為であったかどうか、について検討します。その中で、特に「スレブレニツァの大虐殺」として知られる1995年の大量虐殺がジェノサイド行為にあたると判示しました。ただし、その行為をおこなった団体自体または代表がユーゴスラビアの国家機関であったとはいえないため、さらに、同国による指示または実効的支配の下でおこなわれたとはいえないため、セルビア「国家自身」の責任を認定することはできないとしました。しかしながら、ジェノサイド条約1条に規定されている防止義務については、ユーゴスラビアがボスニアのセルビア人に影響力があったこと、および当該団体がユーゴスラビアとつながりを有していたことを重視して、セルビアが同条に違反したことを認定しました。さらに、ジェノサイド禁止条約6条に規定されている、裁判に関する義務について、ICTYから訴追を受けている人物をセルビア領域内で身柄拘束しなかったことが同条違反であるとしました。
 ボスニア・ヘルツェゴビナが求めていた損害賠償について、ICJは、判決主文においてセルビアの行為がジェノサイド条約に規定されている防止義務に違反したことおよび訴追されている人物をICTYへ移送する義務を有することを確認・宣言することで、ボスニア・ヘルツェゴビナの側の「満足(satisfaction)」が達成されたと述べ、損害賠償については認めませんでした。1993年に出された二つの仮保全措置に関する義務違反についても、判決主文で宣言することで足りる、としています。


「ZERI's Life」−ライフスタイルを語り合う交流会のご案内(2月20日)
 ライフスタイルは人それぞれ。そこで今回、「ZERI's Life−あなたの生活は?」と題して、それぞれのライフスタイルを皆で語り合う場を設けてみました。さまざまなバックグラウンドを抱えた、さまざまな年代の人が、自分のライフスタイルあるいは人生をあらわす「もの」を何か一品持ち寄り、お茶を飲みながら気軽に語り合う・・・そんな場です。
 ZERIは鎌倉を拠点としていわゆる「ごみゼロ」社会に向けた環境教育をおこなっているNPOですが、これまであまり環境問題に関心がなかった人にもぜひ輪に加わっていただき、教育に限らず、産業、経済、ライフスタイル、人生観などなど、ざっくばらんに語り合う機会になればと思っています。
 
 詳しくはこちらをどうぞ。

 ZERIエデュケーション・ジャパン ホームページへ


気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次報告書が発表されました(2月2日)
 IPCCは前回の第3次報告書(2001年)以来6年ぶりに報告書をまとめました。この第4次報告書のうち、まず3つの作業部会のなかで「気候システムおよび気候変動に関する科学的知見」を扱う第1作業部会の報告書が2月2日に発表されました。前回の報告書とは異なり、地球温暖化の原因が人為的なものであることを強調している点が特筆されます。他の作業部会の報告書についても2007年中に順次発表される予定です。
 
第1作業部会の報告書(要約;英文)はこちら

<気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とは>
 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change; IPCC)は、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が共同で設立した組織です。各国政府によって任命された科学者などで組織され、気候変動に関する最新の知見や影響について評価し、その上で気候変動に対処するための戦略を示すことを主な目的としています。これまで第1次、第2次、第3次報告書を発表しており、政府間の交渉に大きな影響を与えてきました。今回の第4次報告書も京都議定書の第1約束期間(2008年〜2012年)後の国際的な枠組みに関する議論に影響を与えることが予想されます。


ウルグアイによる仮保全措置の請求が棄却されました(1月23日)

 ICJは「ウルグアイ川パルプ工場事件」(2006年5月4日参照)において、ウルグアイが請求していた仮保全措置(2006年11月30日参照)を14対1で棄却しました。ICJはまず、仮保全措置を要請するためには一見して(prima facie)管轄権が存在していることが必要であるという従来の立場を踏襲しつつ、本件ではそれが認められるとしました。次に裁判所は、仮保全措置が本案と関連していることを要するという原則を確認し、ウルグアイが求めている請求内容は本案事項と関連性が存在することを認めました。しかし、ICJはアルゼンチンによる道路の封鎖にも関わらずパルプ工場の建設は進んでおり、権利侵害の切迫した緊急性は認められないとしてウルグアイの要請を棄却しました。


講演会のお知らせ(1月15日 ※開催は1月23日)
 日本の安全保障問題の第一人者である森本敏氏を招いて下記の要領で講演会が開かれます。ふるってご参加ください。

講師 森本敏(拓殖大学海外事情研究所長)

内容 「東アジア情勢と日本外交」

日時 1月23日(火)
時間 13:10〜14:40
場所 経済学部棟 B館101号室



                                           [以下、2006年分]

ウルグアイがICJに仮保全措置を請求しました(11月30日)

 「ウルグアイ川パルプ工場事件」(5月4日参照)でウルグアイが国際司法裁判所に仮保全措置を請求しました。ウルグアイによれば、ウルグアイ川に架かる両国を結ぶ橋において、アルゼンチン人の集団が橋を封鎖しており、ウルグアイ経済に多大な被害を及ぼしているということです。さらにウルグアイはそうした状況においてアルゼンチン政府は主権国家として何ら対策をおこなっていないとも主張しています。そこで仮保全措置を請求し、最終判決が下されるまでアルゼンチンが「ウルグアイとアルゼンチンの間の橋及び道路の封鎖を含む、両国間の移動を妨害する行為を防止する又は終了させるため、使用しうるあらゆる合理的かつ適切な手段をとる」こと、及び「紛争を悪化、拡大又は解決を一層困難にするようなあらゆる措置を慎む」ことなどを求めるに至りました。もっともウルグアイとしてはこの一件に関しては外交交渉による解決を望んでいるようです。なお、本事件については、以前アルゼンチンの側から工事の中止を求める仮保全措置が出されていましたが、同裁判所によって請求が棄却されています(7月13日参照)。


裁判員制度に関する特別講演会が開催されます(11月20日
※開催は12月4日
 平成21年から実施される裁判員制度は一般市民が司法過程に参加する点で多くの関心を集めています。このたび近畿大学では現職の裁判官をお招きして裁判員制度についての特別講演会を開催することになりました。多くの学生諸君の参加をお待ちしています。

講師 北村 和(きたむら わたる)氏(大阪高等裁判所判事・第4刑事部所属)

内容 裁判員制度に関するビデオ上映(予定)および制度説明

期日 12月4日(月)
時間 13:10〜14:40(3限)
場所 20-1教室

国連安全保障理事会が北朝鮮制裁決議を採択しました(10月16日)
 安全保障理事会は14日午後、国連憲章第41条に基づく制裁を実施する決議1718を採択し、北朝鮮の核実験実施に対する憲章第7章下の対応として強い態度を示しました。国連加盟国は憲章25条において安保理決議の拘束力を認めているため、今回の決定に従う法的な義務があります。ただし、北朝鮮に出入りする貨物の検査については、表現が弱められており、解釈に幅を認める余地を残しています。今回の決議に北朝鮮は強く反発しており、同国は「対抗措置」の実施に言及するとともに、「さらなる圧力は宣戦布告とみなす」としています。今回の決議に基づく措置が不十分であると安保理によって認定された場合には、憲章第42条に基づきさらに軍事的な集団的措置へ進むことも考えられるため、今後数週間は予断を許さない状況が続きそうです。

次期国連事務総長に韓国の潘基文(パン・ギムン)氏が選出されることが確実になりました(10月4日)

 詳しくは10月4日付新聞各紙又はこちらを参照: 
http://www.excite.co.jp/News/world/20061003092715/Kyodo_20061003a367010s20061003092715.html

事務総長の選挙は国連憲章27条3項に従い、すべての常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票によって行われ、総会がそれを追認する形で選出されます。

歴代事務総長は国連広報センターのサイトで確認できます。
http://www.unic.or.jp/know/presi.htm

秋季学術講演会のお知らせ(9月25日)
 本年度の秋季学術講演会が以下の要領で開催されます。興味のある学生はご参加ください。

講師  倉澤 康一郎(くらさわ やすいちろう)氏(慶応大学名誉教授)

演題: 「近代市民法と現代」

期日 10月17日(火)
時間 3時限(午後1時10分〜午後2時40分)
場所 20−1教室

最高裁が「制限免除主義」の立場をとる判決を下しました(7月21日)
 最高裁第二小法廷は21日、パキスタン政府が購入したコンピューター代金の支払いを東京の貿易会社が求めていた訴訟で、外国の主権国家に日本の民事裁判権が及ぶとする新たな判断を下しました。日本はこれまで不動産など一部の訴訟を除き、外国政府に対する日本の民事裁判権を免除する「絶対免除主義」を採用してきましたが、この判決により、商業活動など私人と同様の行為(私法的行為)については主権免除を認めないとする「制限免除主義」へと舵を切ったことになります。欧米ではすでに70年代から制限免除主義を取り入れており、条約制定の動きも盛んとなっています(例えば2004年の「国家と国家財産の免除に関する国連条約」)。今回の判決はこうした国際社会の潮流を捉えたものと言えそうです。[講義では第11回「国際法における国家(3)」で扱いました。]

ウルグアイ川パルプ工場事件でICJが仮保全措置請求を棄却しました(7月13日)
 ウルグアイがアルゼンチンとの国境を流れるウルグアイ川にパルプ工場を建設する決定をおこなったことが争われている事件(5月4日のNews&Events参照)で、国際司法裁判所は7月13日に、工場建設を中止し協議をおこなうことを求める内容のアルゼンチン側による仮保全措置の請求を14対1で棄却しました。それによれば、パルプ工場の建設が河川に不可逆的な悪影響を与えることが十分に示されておらず、またウルグアイがすでに協力的な姿勢をアルゼンチン側に示していることなどにより、仮保全措置を命令する諸要件を満たしていないということです。ただし、この中で裁判所は共有天然資源(shared natural resources)の保護と持続的な経済発展の調和の重要性を指摘しており、このことはいわゆる「持続可能な開発」が司法判断にどのような影響力を持ちえるかという観点から注目されます。この点は「アルゼンチンの求める環境保護」と「ウルグアイの主張する開発の権利」という形で本案の中で再度詳細に言及されるかもしれません。さらに裁判所は新たな事実が発生した場合には再度アルゼンチン側が仮保全措置を求める可能性を認めています。
 今後は本案に対する管轄権と受理可能性の有無を判断したうえで、実体判断へと進んでいくことになると思われます。

国連人権理事会の初会合が条約案と宣言を採択して閉幕しました(7月1日)
 ジュネーブで開かれていた国連人権理事会の初会合が6月29日に閉幕しました。同会合の結果、国家による拉致を禁じた「強制失踪からのあらゆる人の保護に関する条約案」(強制失踪条約)および「先住民に関する宣言」が採択されました。強制失踪条約は国家が関与する拉致を「人道に対する罪」として位置づけ、防止及び補償・解放の両面について規定しているようです。条約案は引き続き国連総会へ送付されて審議されることになっています。

2年生ガイダンス「知ってトクする就職の基本」が開催されます(6月29日)
 学部2年生を対象に就職対策や面接の内容についてベネッセコーポレーションの講師を招いてガイダンスが開かれます。就活のスケジュールがよく分からない、何をすればいいのかよく分からない、現役の企業人の話を聞いてみたい、そんな方はぜひ参加してください。
日時・会場
7月3日(月) 13:10〜 20−3教室
  4日(火) 18:10〜 EキャンパスA館301
  5日(水) 13:10〜 20−3
  5日(水) 14:50〜 EキャンパスB館301
※日時と会場は念のため就職部に確認してください。

自己プログレス・レポートが格安で受験できます(2年生対象)(6月29日)
 自己プログレス・レポートとは、現在の自分を客観的に分析して、将来の進路について考えるための検査です。大学の援助により本来3000円の受験料が1000円となります。定員がありますので、興味のある学生は早めに就職部へどうぞ。2年生対象です。

「アジア市場経済学会」第10回全国大会が開催されます(6月26日)
 アジアにはEUのような共同体はさまざまな理由により依然として存在していませんが、欧州、北米、南米、アフリカでは地域的な自由貿易協定が発展しつつあります。そこでアジアでも地域的な経済共同体を構築しようとの動きが生じつつあります。「東アジア経済共同体」はその一つです。もっとも、アジア全体の発展のためにどのような共同体にするべきかという問題や、そうした地域的な経済共同体を設立した場合の世界貿易機関(WTO)との関係の問題が発生してくることが予想されます。
 今回の「アジア市場経済学会」はこうした点に関する報告を中心に、海外からも報告者を招き、議論する場を提供してくれそうです。国際経済、アジアにおける途上国の発展問題、経済理論などに興味がある学生はどうぞ。
 開催日:7月15日(土)、16日(日)
 場所:経済学部B館301号室
 プログラム

 
15日  9:40〜11:50「東アジア経済共同体の新段階」、13:00〜15:00「特別講演」
 16日
  9:30〜15:00「自由論題報告」
 ※両日とも、別会場にて平行してWorkshop Sessionが開催されます(すべて英語、通訳なし[予定])
 ※以上の点につき、詳しい内容を知りたい方は西谷までどうぞ。

ドミニカ共和国が訴えを取り下げました(6月13日)
 自国が派遣した使節に対する待遇の問題でスイスをICJに訴えていたドミニカ(4月27日参照)が、6月12日に書面でICJ事務局に対し訴えを取り下げる旨、通知してきました。これを受け、ICJは訴訟リストからはずすことを決定しました。取り下げた理由の詳細は不明ですが、訴訟の提起自体が外交上のパフォーマンス(アピール)であった可能性もあります。

五百籏頭 眞(いおきべ まこと)氏の講演会が開催されます(5月18日)
 神戸大学の五百籏頭先生が、近畿大学で講演されます(今年度の春季学術講演会です)。国際関係、国際政治に興味がある方はぜひご参加ください。もちろん、それ以外の学生にとっても日本の将来を考える上で興味深い内容だと思います。
テーマ:「激動の世界と日本」
日時: 6月6日(火)、 16:30〜18:00(5限)
場所:20-1教室


アルゼンチンがウルグアイをICJに提訴しました(5月4日)
 アルゼンチンは5月4日、ウルグアイが1975年に両国が締結したウルグアイ川の利用に関する協定などに違反したとして、同国をICJに訴えました。アルゼンチンによると、ウルグアイが川沿いにパルプ工場を事前の通報および協議をおこなうことなく建設したことにより、対岸のアルゼンチンの町の漁業や川の自然環境の保護に重大な損害の脅威を与えているとのことです。なお、アルゼンチンはこの種の損害が金銭賠償では治癒できない類ものであるという理由で、さらにICJに対して工場の新規建設を禁ずることなどを求めた仮保全措置も申請しています。

ドミニカ共和国がスイスをICJに提訴しました(4月27日)
 4月27日、ドミニカ共和国は自国の派遣した使節がビジネスマンであるという理由でスイス政府が受け入れを拒否したことは、ウィーン外交関係条約、国連憲章2条7項、国連とスイス政府が締結した協定、友好関係原則宣言に表現された一般国際法などに違反しているとして、ICJに提訴しました。なおドミニカもスイスもICJ規程36条2項の受諾宣言をおこなっています。


ダルフール問題で安全保障理事会が個人を名宛人として制裁決議を採択しました(4月26日)
 国連安全保障理事会は4月25日、スーダンのダルフール地方で多くの住民を殺傷するなどの非人道的行為をおこなった4名に対して、渡航禁止、在外資産凍結などを含む米国が提出した決議案を採択しました(賛成12、棄権3[ロシア、中国、カタール])。ロシアと中国は反対の理由として、現在進行中の和平会議に水を差すことを挙げています。安保理が個人を名宛人として制裁決議を採択するのは異例のことです。米国大使、ジョン・ボルトンはさらにこうした決議を採択する可能性を示唆しています。ロシアや中国とは反対に、この制裁決議が和平協定の採択を促進するとの予想が背景にあるようです。

日本が人権理事会理事国に立候補を表明しました(4月13日)
 設立が決まった「人権理事会」、47カ国の理事国に立候補することを日本政府が表明しました。理事国になる条件は国連総会の選挙で96カ国からの支持票を獲得することです。アジア地域には13の席が割り当てられており、現在水面下で激しい駆け引きが繰り広げられているそうです(朝日新聞より)。

ゼロエミッションに関する記事が掲載されています(4月3日)
 月刊「フードリサーチ」4月号(食品研究社)に私の書いた記事、「廃棄物に眠る付加価値の発見−ゴットランドのニンジンマフィンにみるゼロエミッションの理念」が掲載されています。スウェーデンのゴットランド島において実現した、規格から外れた大量のニンジンを使ってマフィンを作り、輸出産業とした実例を使いながら、廃棄物を有効利用することによって持続可能な社会を目指すゼロエミッションの理念を紹介しています。環境問題やゴミ問題に興味がある方はどうぞ。
フードリサーチ4月号内容: http://www.shokuhinkenkyusha.com/fr/new.html

国連に「人権理事会」が創設されます(3月17日)
 国連総会は3月15日、「人権理事会」を創設する決議案を賛成170、反対4、棄権3で採択しました。国連にはすでに「人権委員会」が存在していましたが、会合が年一回なため、迅速な対応が困難であること、また構成国の事情などにより、半ば形式上の存在に陥っていました。それを衣替えして、常設機関としたのが「人権理事会」です。これはもともと米国が主張していたことだったのですが、当の米国は理事会の構成に強く意義を唱えて反対票を投じました(日本は賛成票を投じています)。もっとも、理事会の運営には他の諸国と協力すると言っています。複雑性と重大性を極める冷戦後の人権問題に効果的に対応できる機関になるかどうか、今後の展開が注目されます。

NPO・NGOに興味がある人要チェック(3月15日)
 
 「ソトコト」4月号の特集は「NPO+NGO」大図鑑です。LOHAS、スローライフ、ボランティア、NPO・・・これらの言葉のどれかにピン!ときた人は要チェックです。↓で紹介したバイオミミクリーの提唱者、ジャニン・ベニュスのインタビューも掲載されています。小さな扱いですが、わがNPOの紹介もあります(57ページ;ZERIエデュケーション・ジャパン)。

祝!出版(3月10日)
 私が事務局長を務めるNPOの代表が中心となって翻訳した『自然と生体に学ぶバイオミミクリー』がオーム社から出版されました。「バイオミミクリー」というのは、「生物たちのまねをする」ということです。どういうことかというと、例えばアワビは常温・常圧、しかも何ら化学処理を施すことなしに、極めて強度の高いセラミックを作り出します。これは「自己組織化」というプロセスによるものなのですが、これは人間がセラミックを作る過程とはまったく異なります。他にも、シロアリはアリ塚の下部と上部に穴を開けておくことによって、アリ塚の内部を一年中快適な温度に保ちます。人間のようにエアコンに頼ることはありません。これらの自然の叡智を真摯に受け入れ、人間の活動をできるだけ生物たちのそれに近づけていくことを研究するのが「バイオミミクリー」で、近年注目を集めています。特に第1章と8章はその理念をよく示していると思います。書店で見かけたらパラパラっと中をのぞいてみて下さい。


ホームページを開設しました(2006年3月9日)
 ホームページを作りました。
これから少しずつブラッシュアップしていくつもりです。